セットバックの意外な落とし穴
不動産の専門用語に、セットバック(道路後退)という言葉があります。
ご存知の方も多いと思いますが、セットバックを簡単に説明させていただきますと、建築をする土地は全て幅4m以上の道路に接している義務があり、その幅に満たない場合は、道路の幅4mが確保できるよう、反対側と半分づつ分け合って後退した線(道路の反対側に水路がある場合には、一方的に4m幅になるまで後退した線)を道路境界線とみなして、土地ごと後退させるというものです。
物件の資料などに書かれている「要セットバック」というのは、このセットバックを行わないと建築ができないという意味、「セットバック済み」というのは、すでに土地を後退させて接道幅4mの条件を満たしてある、という意味で受け取っていただければ良いと思います。
これを前提に、今回の事例についてお話してまいりましょう。 今回の物件を紹介してくれた業者さんの資料には、道路幅が3m、セットバックが1mと記載されていました。接している道路の反対側が水路なので、道路の中心線からのセットバックではなく、1mまるまる後退した線が境界となるため、通常のセットバックより不利になる形です。 ご相談のお客様からは価格交渉のご要請もありましたが、1mセットバックして現在の面積より5坪減るものの、それを考慮しても近隣の相場より遙かに格安で値打ちな物件だったので、 「確実にこの物件を押さえるつもりでみえるなら、そのままの価格で申し込まれた方がいいかもしれません」 とお話をし、契約の日時も決まって商談成立となったのでした。
ところがその後、当社の物件調査直前にお客様から、 「3m幅の道路のはずが、現地を測ってみたら2.5mしかなかった」 とご連絡が入ったので、予定を繰り上げて現地に行って測量してみると、確かにお客様が言われた通り2.5mしかないのです。市の資料を調べ、物件資料上の3m幅というのも全く根拠のない数値ではなく、市が定めた管理幅員では3mになっていることがわかったので、さらに市の見解を聞いてみると、昭和40年代に区画整理事業が行われた時に示された幅が3mで、そのまま継承している、とのこと…。
とにかく問題は、道路幅3mでなく2.5mからセットバックすることになると、1mのセットバックが1.5mのセットバックに変わり、5坪減るはずの予定が7.6坪も減ることになってしまうということです。そこで白黒つけるため市の指導を求め、現地調査をしてから回答するという市の返答を待ったのですが、ご想像通り、市の回答は木で鼻をくくったようなものだったのです。 予定していた契約を一時中断し、売主様には市から今回の事情を説明してもらうと共に再度価格交渉をすることになりましたが、そもそも売主様側の不手際でもありませんし、契約前の土壇場で発覚した問題で値下げを承諾していただくことも出来ずで、最終的には商談不成立となってしまいました。
しかし今回の事例のように、調査して初めて事実が発覚する事というのは頻繁にあることです。そして、売買の意思表示をした後に発覚した事実で契約をキャンセルする場合、もちろん買主様側にペナルティはありません。また、当社が徹底して現地調査を行うのは、このように、事実を知らないままお客様に不利なご契約を結んでいただかないためですので、どうぞご安心の上、お任せいただきたいと思います。
ところでこの事例のお客様には、商談不成立後わずか2週間後に、更にお値打ちな物件を紹介させていただくことができ、無事ご成約の運びとなりましたので、こちらも合わせてご報告させていだだきます。
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