無責任な業者にご注意!~重要事項説明義務編
今回は、仲介業者が物件の用途地域を勘違いしたまま契約を締結して、買い主様から損害賠償を訴えられたケースについて、実際の判例からお話していきたいと思います。
ある仲介業者Aが、Bの所有する店舗兼住宅の売却をすることになりました。 売り主であるBは業者に、物件の用途地域は「第一種住居地域」であると伝え、業者Bは社内に都市計画図がなかったので、当該物件近隣の業者に電話で問い合わせをしました。
するとその業者から「第一種住居地域で建ぺい率60%容積率200%であろう」との回答を得たので、その回答を鵜呑みにし、実際には「第一種低層住居専用地域/建ぺい率50%容積率80%」であったにもかかわらず、土地の買い主Cと契約を交わす際、用途地域を「第一種住居地域」として説明してしまったのです。
そして買い主Cは購入後になって、実際の用途地域は「第一種低層住居専用地域」であり、契約時に聞いた建ぺい率、容積率と違っていることを知りました。 買い主Cにとって、それは、
「なんだ、用途地域が違っていたのか」
で済む話ではありませんでした。 なぜなら買い主Cは、仲介業者にこそ話してありませんでしたが、将来的には現況の建物を取り壊して三階建ての二世帯住宅を建て、息子一家と同居するつもりだったからです。 Cがその物件を購入したのは、その土地が大型住居の建築も可能である「第一種住居地域」であると思ったからなのです。実際の建ぺい率と容積率、そして高度制限では、Cの考えるような住宅への改築は難しいわけですから、そうと知っていれば、初めからその物件を購入したいとは考えなかったでしょう。
そこで買い主Cは、用途地域が誤っていたことを知っていたら契約を締結しなかったとして、仲介業者Aに対して契約の無効を主張するとともに、仲介手数料、登記費用等の損害賠償を請求したのです。
仲介業者Aの言い分は、こうでした。
「誤った説明をしたことは認めるが、買い主は契約時に建ぺい率や容積率にこだわっていなかったのだから、売買契約は有効であり、損害は発生していない」
これにはまったく開いた口がふさがりません。 売り主が口頭で言っただけの用途地域を、さらに全く無関係の業者に電話で確認しただけで重要事項の説明を行うなど、不動産取引業者に課せられている「重要事項説明義務」に完全に違反する行為だからです。
結局、この業者に対しては、仲介手数料とその他の出費について損害賠償が命じられ、売買契約も無効、代金の返還も行うように、という判決がおりたのでした。
今回のケースにおいて最も重要なのは、仲介業者Aが当然の調査義務を行ったという部分でしたが、もしも買い主Cが土地の購入を相談した際、将来は三階建ての二世帯住宅に建て替え出来るような物件が欲しい、と話してあったとしたら…、また結果は変わっていたかもしれません。しかし、そうと聞いていても「売れてしまえば何でも良い」とばかり、調査もそこそこに契約を進める業者も、まったく存在しないとは言い切れません。
全ての業者が責任を持って業務を行ってくれれば問題はないのですが、ごくまれにこのような事も起こってしまいます。皆様には、いざという時不利な立場に立たされることがないよう、仲介業者の義務や役割について良くお知りいただいた上で、最大限にご活用いただきたいと思います。
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