たかが排水、されど排水
今回はとある物件を仲介した時に体験した事例について、紹介させていただこうと思います。
それは北側と南側を道路にはさまれた面積約300坪の土地で、南側の区画をA、北側の区画をBとして販売されている他社物件でした。そのA区画を当社が仲介することになったので、こちらでも調査を進め、特に問題がなかったのでご契約を結ぶ運びとなりました。
その後、もう一方のB区画にも、A区画の契約前日に申し込みが入ったので、改めてB区画の調査も始めました。すると、B区画に接している水路は用水路で、そこには排水が出来ないことが判明したのです。
そこで市の担当者に、B区画の配水管を用水路と道路を横断させて、反対側の水路に排水することは出来ないか?と質問したところ、地元の区長さんの同意があれば可能かもしれないと言われたので、早速区長さんに現地を見ていただき、その方法で同意してもらうようにお願いしたのですが、結果的には却下されてしまいました。
こうなると、最終案として、南側のA区画にB区画の配水管を通して排水するしかなくなってしまいます。ですが、そのような内容をA区画の買主様が納得してくださるか、まだ何の話し合いも出来ていない状態で契約内容に盛り込めるはずがありません。
契約は、すでに数時間後に迫っていました。他社物件とはいえ、排水路のない区画を仲介するわけにもいきません。契約時に買主様に相談してご納得いただけなかったら、契約がその場で流れてしまうことになるのです。
結果、協議中いくつかの問題点は出ましたが、買主様が快く相談に乗ってくださったおかげで、滞りなく合意書を作成することが出来ました。 ご参考までにその内容とは、以下の3点です。
- 本物件を分筆した後の、南側A区画の西側部分に北側B区画の配水管を埋設、排水経路を確保する事を、南側A区画の買主は使用承諾し、北側B区画の買主に使用権を認める。
- 北側B区画の買主が第三者に売買し名義が変わっても、使用権を引き継ぐ事が出来る。
- 北側B区画から南側A区画に引き込む配水管工事の費用は、売主の負担と責任で行う。
今回は結果的に丸くおさまったから良いようなものの、もしもA区画の買主様に、ご自身の土地への排水経路の確保を使用承諾してもらえなかったら、残りのB区画はどうなっていたのか?また、このような問題点がA区画の契約後であったら、どうなっていたのか? と、考えだすと冷や汗が出るようなことばかりです。
では、このような問題は何故発生してしまったのでしょうか?それは、売主側の業者が分筆案を出す前に入念な調査をしなかったことが原因なのです。
通常、不動産売買の取引には、販売元の業者(今回で言うと他社)が物件の調査を事前に済ませてから販売する、と言う大前提があります。しかし当社では、そのような業界の慣例を無視して必ず独自に現地調査を行っていますので、万が一他社に調査の漏れがあっても、今回のように問題を調整することが出来るのです。
もっとも、たくさんある不動産業者の中には、売主側業者の調査を信頼しきって当日まで何もせず契約に臨むところも少なくありません。この事例を経験したことにより、ますます事前の調査をしっかり行わなくては、と考えた当社スタッフ一同でありました。
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