うそをついた売り主
先日、東海地方を大雨が襲った時のこと。 中古住宅をご購入されたお客様から、相次いでお電話をいただきました。
「雨が漏ってきたのですが…」 「雨が漏るなら買わなかった…」
ひとしきり状況をうかがってから、こうご説明しました。
「台風や大雨などの時は、風の吹き返しで雨が下から入って来ることもあり、中古に限らず新築住宅でも雨漏りの可能性はあります」 「そこまで天候がひどくないのに漏って来る場合は論外ですが、台風や大雨については水害としてお考えください」
お電話のお客様には、ご納得いただくことができました。 それからしばらく後、今度は昨年中古住宅をご購入いただいたお客様からお電話がありました。
「雨漏りの件ですが…」
しかしお話をうかがっていくと、先ほどのお客様がたとは何だかご様子が違います。
「とにかく、一度見てほしいんです」
すぐ現地に向かい、お宅を拝見することにしました。
「雨が漏ったので工事しようとしたら…」
言いよどむ奥様。
「どうなさったんですか」 「見てください。始めからこうなっていたんですよ…」
うながされ、恐る恐る天井裏を覗き込んでびっくり! なんと、天井裏の梁にビニールシートが張ってあったのです。雨漏りがしても、しばらくは水が落ちてこないようにするためでしょう。今回の大雨でシートが受けていた水が溢れて、初めて雨漏りが発覚したということなのです。
「なんじゃこりゃぁ~」
客先にも関わらず、思わず声を上げてしまいました。 前所有者である売り主が、雨漏りを故意に隠していた動かぬ証拠がそこにあったのです。
契約時の物件確認書には、雨漏りの形跡はない、補修もしたことがないと記載してありましたし、 「うちの家は雨が漏るような家じゃない、素晴らしい家です」と、売り主本人の説明も聞いていたのに! 嘘をつかれていたのです。
今回、売り側には別の業者がついていたので、先方にも現状を把握してもらいましたが、同様に言葉を失っていました。売り主にも、すぐに確認の電話を入れました。しかし、
「中古住宅だし、値交渉もしたんだから、そんなことしらない」
と、こうです。二回目からは、電話にも出てくれません。逃げています。認めたということに他なりません。 裁判になれば、売り主が間違いなく負けるのです。こちらとしては穏便に済ませたいですし、謝罪と補修費の支払いさえお約束いただければ、丸く収める自信はありました。しかし、逃げられてしまってはどうしようもありません。
そして建物の方も、そのままの状態で放置しておくことはできません。売り主の責任追及は売り側業者の責任で進めてもらいながら、早急に補修工事の手続きを行いました。 こういうケースですと、売り主側に支払能力がない場合など、工事費を取りはぐれることもあります。そのため、担当となった業者次第では、支払いを代替わりするの嫌さに工事になかなか着手してくれないケースもあり、そうなると買い主様が一方的に迷惑することになります。仲介業者を慎重に選ばなくてはいけない理由が、そこにあると言えます。
さて、やがて一時は雲隠れしていた売り主も見つかり、弁護士まで駆り出した係争が始まりました。判決まで多少時間はかかりましたが、売り主の嘘による瑕疵担保責任も認められることとなり、雨漏り天井の補修も終わって、無事一件落着となりました。 売り側業者にお願いして、解決する前に雨漏りの工事はさせてもらっていたおかげで、買い主様にとっても、係争が長引いたことによる不利益が一切なく済んだことは幸いでした。
このようなトラブルに遭遇したのは残念なことでしたが、買い主様へのご迷惑を最小限にとどめることができ、スタッフ一同ほっとしたという出来事でした。
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