売り止め物件の向こう側
気になる物件を問い合わせた後、
「この物件は売り止めになりました」
とお断りをを受けた方が、少なからずいらっしゃるのではないかと思います。
この「売り止め」というのは何かと言いますと、それには二種類ありまして、売り主様が何らかのご事情により本当に売るのを止めた「売り止め」が一つ。売り側の不動産業者が物件情報を他業者(当社を含む)に出し渋ったため、やむなく「売り止め」として処理したものが一つ、です。そしてお客様に「売り止め」の連絡をした場合の比率で言うなら、圧倒的に後者であることが多いのです。
まれにお客様から、
「お宅で資料をもらえないなら直接もらうから、情報元の業者の名前を教えて」
というご依頼をいただくこともあるのですが、それが後にトラブルに発展してしまうケースが少なくないため、当社では売り止め物件の業者名は公表しないようにしています。
具体的にどのようなトラブルか? というと、その物件は実は「おとり広告(問い合わせたお客様に全く別の物件購入を強引に持ちかけるための偽の広告)のための物件」で、不満足な物件を買わされてしまったり、あるいは新聞に広告されていた物件が、借金回収の為にサラ金業者が勝手に売り出したもので、問い合わせたお客様が業者に、「所有者に売るようにこれからかけ合うので、売却の承諾がでたら必ず購入すると確約して欲しい」と迫られてしまったり、というようなことです。
残念なことですが、相手を素人と見てやりたい放題をする業者は、まだまだ存在するのです。多くの真面目な仲介業者が、お客様が業者に直接交渉を行うことに対して慎重なのは、そうした理由からと言っても過言ではありません。
本来、売り物件の情報は、所有者である売り主様と、ご購入を目的としている買い主様両方のために存在するものです。仲介をさせていただく立場の業者が、勝手な都合で大事な情報の発信に制限をかけたり、都合のよい条件を勝手に付け加えたりするなど、あってはならないことです。
以前、こんな事もありました。
Aさんから、とある物件ご購入のお申し込みを受けたので、売り主Bさん側の不動産業者Cに問い合わせたところ、
「その物件はD不動産に売却が決定しました。今後はD不動産が売り主になるので、どうしてもご購入されたいなら、まず買い付け証明を出してもらってください」
と言うのです。Aさんのご購入への意思が固かったこともあって、言われるまま買い付け証明を出し、D不動産を売主として、C不動産と鵜飼不動産の共同仲介で契約、物件の引き渡しも済みましたが…。 しばらく経ってから、私はこの取引のカラクリを偶然耳にしてしまったのです。本当に唖然としてしまいました。真相は、こうです。
もともとその物件は、売却の努力をせずにいたC不動産では、一年以上も買い手が見つからなかったのでした。所有者Bさんはお金に困っていましたが、これ以上売れ残るよりは、と大幅な値下げを泣く泣く決断。その価格でC不動産と打ち合わせをしていた矢先、私ども鵜飼不動産から思いがけず購入の話が入ったのです。
しかし、それをそのままBさんに伝えてしまうと、Bさんからの仲介手数料しか懐に入ってこない、と考えたC不動産。仲のよいD不動産に話を持ちかけて、値切った価格で一旦BさんからD不動産に売却させます。もちろん、この時点でC不動産はBさんからもD不動産からも手数料をもらい、更にD不動産がAさんに売却する際にも仲介業者として名を連ねて、二回に渡ってD不動産から仲介手数料を支払われた、というわけなのです。 もちろんD不動産は、BさんからAさんへ物件を転売した時の利益が十分あるので、C不動産に仲介手数料を二回支払っても、痛くもかゆくもありません…。
皆様も考えてみてください。もし、C不動産が業者として当然の義務を果たし、当社からの購入の話をすんなりBさんに伝えていたら? Bさんは何百万円という代金を取りはぐれずに済んだはずですし、買い主Aさんも、実際より少しは安い値段で物件を購入できたかもしれないのです。
不動産を扱う業者とは、このように、やりようによっては情報を操作するだけで莫大な利益を得ることができてしまいます。仲介手数料という名の「お金の誘惑に打ち勝てる魂」を常に問われ続ける職種、とも言えるのです。売る人と買う人の両方が、一銭も無駄にすることのない取引こそが、不動産仲介の理想なのです。
売り買い全ての物件情報が正しく流通し、「売り止め」といえば当然、本来の意味での「売り止め」しかありえない、と言えるような環境を目指して!
鵜飼不動産は今後も努力してまいりたいと思っています!
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